【高村薫】
末脚なら一番。起承転結の起承転で蓄積された力を一気に放出させる書き
味がなんとも言えない高村さんの作品です。
どの作品も最終的に面白いのですが、硬派な切り口と最終コーナーにかか
るまでの淡々とした語り口調に落馬してしまう人もいるかもしれません。
それでも面白さは保証しますのでぜひ手を伸ばして欲しい作家さんの一人
です。
神の火(高村薫・新潮社文庫)
[キーワード]二重スパイ、原発、北、CIA、友情、寡默
全編通して感じたことは、日本海の中を漂っているような気分でした。原発
に突入する場面や最後の場面はそれなりに盛り上がっていたのですが、個人
的には良との最期の方が鮮明に脳裏に焼きついていています。ここで終わり
でも良かったのかも・・・といったらタイトルから変えないといけませんね
(笑)印象に残る台詞は主人公の島田の友人がよく言っていた『目玉ふたー
ーーーーつっ!!』です。あと江口のダンディーさも何だか滑稽で楽しかっ
たです。『20世紀の発明』と言われた原発ノ是非について書かれているの
もご時世柄読んでみるのもいいかもしれません。高村薫ファンで寡黙な雰囲
気がお好きならば手にとってみて下さいませ。
・・・クラクラする頭だとこんな風にしかまとめられませんわ(T_T)
照柿(高村薫・講談社)
物語の冒頭は高村さんの作品らしく重く静かに展開していきます。本作品
では特に何かを背負った登場人物が出てくる訳ではありませんが、その分
だけ登場人物に対する思い入れというか重苦しさはいつも以上かもしれま
せん。また『照柿色』というのが作品中の要所要所に出てくるのですが、
最後のシーンにはグッときてしまいました。この作品だけでなく、高村薫
さんの全ての作品に言えることなのですけど、読み終わった直後よりも、
しばらくして思い返した時の方が印象に残る作品が多いと思うのは私だけ
でしょうか?という訳で『李歐』『マークスの山』の後に読んでいただく
のがお勧めでしょうか。蛇足ですが、大阪の非快適ぶりな描写にはいつも
ながら真実味というか凄味がありますね(笑)
マークスの山(高村薫・早川書房)
帯に「白熱の警察小説」とあるように高村さんらしい警察の捜査を中心に描
いた作品です。今まで読んだ高村作品と違って、物語が最初からゆるやかに
進んでいるのには少々驚きました。その代わりラストの疾走感は差程でした
けど。あと舞台が設定が分かり易かったのは日本国内でおこった物語だから
なのでしょうね。シナリオ的には李鴎(りおう)やリヴィエラを撃ての方が
面白かったですが、高村さんの小説に今から触れる方にはこの作品の方がお
勧めかもしれませんね。ちなみに第12回日本冒険小説協会大賞、第109
回直木賞、週間文春’93ベストミステリー1位、週間現代ベスト・エンタ
テイメント第1位、このミス’93第1位でした。
地を這う虫(高村薫・文藝春秋)
高村薫さんの短編集である本書は全ての物語の主人公が刑事、もしくは元
刑事だったというオムニバス型式で綴られています。相変わらず高村さん
らしい固い文調と不器用な男たちの生き様はあっと言う間にこの世界観に
引き寄せられてしまいます。ただ最終話を除く作品はほんの少々消化不良
に陥ってしまうかもしれません(特に第一話と二話は繋がっているかと思
いましたよ)。しかし高村作品に興味はあるけど触れたことの無い人にと
ってはいい入門編だと思います。前述しましたけど最終話の定年間際な刑
事のお話はホッとさせられて好きですねぇ。ホントよく出来た奥さんでえ
らく好みでだったりします♪(渋好みの極致かも(笑))
【黄金を抱いて翔べ(高村薫・新潮社文庫】
最初はじっくり読ませて最後の最後での疾走感がいつもながらたまらない
作品です。第三者的な視点で描かれており、緻密な世界を生み出していま
す。だからといって登場人物の息遣いがリアルに感じることが出来ます。
シナリオ的には金融機関の地下に眠る金塊を手に入れようとする男たちの
話です。一見コミカルに感じてしまうようなシナリオをここまで昇華させ
ちゃうなんてホントにこれが最初の作品なの!と唸らせる出来でした。
【リヴィエラを撃て(上・下)(高村薫・新潮文庫)】
IRAが指令を受けて殺した相手が引き起こす埋もれていた過去。この過
去を巡り再び悲劇が起こる。
上下巻を通じて暗躍する諜報機関の合従連衡。上巻は比較的淡々と進みま
すが下巻で一気に展開が早くなります。流石高村さんという緻密な設定も
満足させます。
【李歐(高村薫・講談社文庫)】
平凡なアルバイト学生と殺し屋が出会った時何かが起こった。どんなに離
れていても通い合う二人の魂。そして二人は・・・。という作品です。推
理モノではありませんけど、終盤まではとっても面白かったですよ。ただ
高村さんを継続して読んでいらっしゃる人には『高村さんらしくない』と
いう声が聞かれます。あ、元々は『我が手に拳銃を』という作品ですので
、まずこちらから読まれてはいかがでしょうか。