恩田陸
恩田さんの特徴といえば、どの作品にもファンタジックな味付けが
してあるところでしょうか。この雰囲気が好き嫌いの分かれるとこ
ろになるかもしれません(私は結構好きですけど)。
蛇行する川のほとりに(恩田陸・中央公論新社)
1〜3巻の書き下ろし連作集になる本書は、恩田さんお得意の女子校生モノ
ということで否が応でも期待してしまうところなのですが、1巻を読んだ時
は何だかどこかで読んだことがある様な内容のよーな・・・短編だから仕方
ないか・・・何て思ってましたけど、2巻の終わりでハッとさせられ、最後
の3巻では余韻に浸ることが出来る良い作品でありました。これは逆に一冊
にまとまっていて一気に読み終えてしまうより、より印象的な作品に仕上が
っていると思います。流石恩田さん!と言える大満足な作品なのでした♪
木曜組曲(恩田陸・徳間文庫)
有名な作家である重松時子が自殺により亡くなってから4年が経過した。
生前から時子の家に集う会に集まった時子の血縁者である4人の作家と編
集者の元に届いたカサブランカの花束がきっかけで、それぞれが胸に抱い
ていた時子の死因にまつわる疑問(自殺or他殺)を作家の視点で議論(推
理・妄想)し合います。面白いのがそれぞれのジャンルの作家の視点から
プロフェッショナルな意見が繰り広げられているところでしょうか。また
この世界に自然フェードイン&アウト出来るのも相変わらずさすがですね
。のめり込み度でいえば恩田さんの十八番である女学生モノの方が上かも
しれませんが、この作品も中々上質だと思いますよ。
puzzle(恩田陸・祥伝社文庫)
オランダの亡霊船や地図の地図の作り方、昔炭鉱があった無人島で変死体
が偶然見つけたという何等関わり合いの無さそうな記事が記載されていて
、読む者をむ者を急遽世界に引きずり込む感はあますが、その後の展開は
中々に見事で、あっという間に幻想的な無人島の世界に引きずり込まれて
しまいました。ただこの小説、長編にすればもっと面白かっただろうな・
・と思わせてしまうのは失敗でありません?祥伝社の企画として讀み易い
中編物を!という事なのですけど、この手の小説でこの厚さだと書き込み
不足にになっちゃうから難しいよなって思いました。駅の売店で売られて
いたら手を伸ばして消化不良に陥り、その後他の作品を読んでもらええう
流れが理想なのでしょうけど・・・やっぱ難しいわな。
黒と茶色の幻想(恩田陸)
【お勧め度】★★★☆☆
大学時代の友人であった男女4人が10数年後に再会し屋久島旅行を計画
する。登場人物の4人それぞれが持つお互いに絡み合った過去のという題
材を屋久島という太古の森林の中で説き明かしてゆくという、非日常の中
の日常ミステリー作品とでも申しましょうか。地味な題材ですがそこは恩
田さんらしく細かく張り巡らせた謎により中盤からぐっと引き込まれてい
きました。恩田作品の中で大好きな「麦の海に沈む果実」なテイストも含
まれています。また、恩田作品の中では比較的読みやすい(感情移入し易
い)作品だと思いますので、ちょっと長めですけどお読みくださいませ。
上と外 1〜6巻(恩田陸・幻冬社文庫)
[お勧め度]★★★☆☆
「ハ〜イ、チカ。」
「ハイ、レン。」
「ヤクソクオボエテル?」
「モンジャヤキ、タベニ、キタ・・・」
文庫本で書き下ろされた作品であるのと同時に1〜2ヶ月に1冊ずつ発
行されました(栗本薫さんのゾアディックシリーズと同じですね)。メ
キシコの滞在する父の元に訪れる母と子供たち。しかし突如勃発したク
ーデターにより、ヘリコプター遊覧を楽しんでいた家族のうち子供2人
がヘリコプターからジャングルへと投げ出されてしまった。九死に一生
を得た子供たちのジャングル放浪&脱出記が様々な視点から描かれてい
ます。この描写表現がスピード感があるので子供たちのスリルな感じが
よく伝わり、夢中になって読んでしまう程面白かったです。恩田さんの
作品としてはリアルな世界観の比率が多かったです。
ただ残念な点を挙げるとするならば「単価が高い」ことですね。1冊ず
つ購入出来れば問題ないのですがまとめて購入すると結構な出費になっ
ちゃうので手を出さない人もいると考えると『もったいないなぁ・・』
って思います。
三月は深き紅の渕を(恩田陸・講談社文庫)
[お勧め度]★★★★☆
短編連作な形式の作品です。ただ個々の作品だけではそれ程盛り上がる
わけでは無く淡々と書き連ねてあるのですが、これが1つのテーマに繋
がって答えが導かれてゆきそうになる時に、『恩田作品の中で最も仮想
現実に引き込まれる凄味(味わい)のある作品に仕上がっているな・・
・』と感じたのでした(特に第4章は圧巻です)。ただ本作品を読む前
に「麦の海に沈む果実」を一読しておくことをお勧めいたします。
光の帝国〜常野物語(恩田陸・集英社文庫)
[お勧め度]★★★★★
様々な特殊能力を有する「常野」の住人たちの悲哀と喜びを描いた短編連作
集です。今まで読んだ恩田ワールドの中でこの作品が一番好きです。きっと
終わりがカチッと決まっていたからなのでしょうが、未来のある終わり方っ
て好きなのです。ま、作品の質にもよりますけどね(笑)
球形の季節(恩田陸・新潮文庫)
[お勧め度]★★★☆☆
オブラートに包まれたようなホラーテイストな作品でした。雰囲気は学校
がメインに描かれている下に書いてある『六番目の小夜子』と同様、セピ
ア色がかっているのですが、怖さの対象物も同様にセピア色がかっている
ので怖い・・・というより何というかしみじみと読めてしまうんですよ。
話の中に出てくる”噂”も、重要なファクターとしてではなく「こういう
のもあったよなー」という見方をしてしまいましたもの。
月の裏側(恩田陸・幻冬社)
[お勧め度]★★★☆☆
じわっと余韻の残る怖さを感じることの出来た作品でした。また、何とな
くファンタジーとホラーの境界線を考えさせられる作品でした。ホラー作
品というのは感覚的に恐ろしいと思わせるのですが、同じように恐ろしい
題材を扱っていたとしてもそれが自分自身に全く影響しないものであれば
、それはファンタジーになってしまうのかな・・・と。この作品は私が恩
田さんの作品で始めて本当にある地名が出来てます。これがこの作品をぐ
っと引き立たせているのですが、前述した通り何か違和感を感じてしまっ
たのも事実です。淡々と読んでしまうのは章立てのせいなのかな?
六番目の小夜子(恩田陸・新潮文庫)
[お勧め度]★★★☆☆
とある進学校で3年に1度現れるの「サヨコ」。当事者だけに伝えられて
ゆく伝承により様々な生徒に様々な形で伝わっているが正確に全貌を捉え
ているものはいない。そして転校生としてやってきた小夜子の不可解な行
動。そんな出来事が間近で起こった「秋」はその謎が「サヨコ」にあると
考え、解明すべく行動するのだったが・・・なんて書くと推理モノのよう
に感じる(それは決して間違ってはいないのですけど)が、サラリと流れ
るようなセピア色の文体が過去を懐かしんで書かれた青春モノのように感
じてしまいました。主人公達は高校3年生として最後の高校生活を過ごし
てゆくのですが、心理描写が非常にリアルで何だか自分の学生時代を懐か
しく思い出しながら読んでいました。
不安な童話(恩田陸・祥伝社文庫)
二十五年前に変死した画家である高槻倫子の遺作展示会に赴いた教授の秘書
である古橋万由子。しかしその会場で既視感に襲われ『鋏が・・・』と呟き
ながら卒倒してしまう。この出来事が呼び水となり高槻倫子の絵に深く関わ
ってゆく。そして・・・。
とにかく読みやすいというか夢中になって読んでしまった作品でした(「麦
の海に沈む果実」と同じやねん!(笑))。読んでゆくうちに死んだはずの
高槻倫子の強烈な個性(ある意味とても人間らしい)細かく丁寧な記述が、
まるで彼女が生きているかの如く生々しく描かれています。「麦の海に〜」
と同じく分類すればミステリーになるのでしょうが、純粋な謎解き物ではあ
りませんのでご注意を。彼女の作ったリアルファンタジーな世界が好きな方
にはお勧めです。
麦の海に沈む果実(恩田陸・講談社)
[お勧め度]★★★★★+★★
灰色の空、そして左右に広がる無機質な湿原の奥に存在する青い丘にひっそりと佇
む全寮制の学園に入学した水野理瀬。そんな幻想的な舞台で彼女を襲う怪奇な現象
や学友達。これに立ち向かう理瀬だったが・・・と書くとホラーのようですがジャ
ンルで分けるならちゃんとミステリーな作品です。ファンタジー作品かと思わせる
ような冒頭の文章ですっかりこの世界に魅了され、すっかり一生徒になって読んで
しまいました(笑)作品的にしっかりとツボを押さえているまとまった作品だった
と思います。賛否両論な部分があるかもしれませんがんが、最後までしっかりと、
そしてしんみりと読ませてくれたので○です。今度は『このミステリーが面白い』
でこの本より上位だった『月の裏側』を読んで感想を書いてみようと思います。