【北村薫】

 

落ち着いたしっとりとした文体で、日常の中に溢れる非日常的ミステリーが

読んでみたい!という方に大お勧めな作者さんのお一人です。ふぇびはこの

方の感性が凄く好きなのです。

 

街の灯(北村薫・文芸春秋)

(謎解きよりも・・・・)

北村薫センセの作品が発売されていると知って内容も確認せずに購入した本

たので最初はお嬢様が主人公な大正時代モノな小説なの?とか思って中

ジが進まなかったのですが、大正時代を舞台とした日常ミステリーモ

と分かるや否や、ぐっと引き込まれあっと言う間に読み終えてしまいまし

。タイトル作品を含む3編の短編が綴られていますが、どの作品も当時の

日常の雰囲気を感じさせてくれます。また、主人公を含む登場するお嬢様

が殆どご令嬢なのも、先日平成のお嬢様作品を一気に読んだばかりなので何

に楽しめたりしたのでした。また、真の主人公であるベッキーさんについ

て何も語られていないのが非常に気にかかるところであります。シリーズ化

を強く望む作品でした。

 

ミステリは万華鏡(北村薫・集英社文庫)

北村薫さんのミステリーの世界への手引き書なのですけど、これと同系

の本である『謎のギャラリー』に比べると、あちらこちらに寄り道してい

て(エッセイっぽくて)読んでいてとても楽しかったです。世代的に既に

入手困難ば作品とか挙げられてもねーとか、流石北村さんや!とか感情豊

に描かれた文章をにまにましながら読んでいました。『男の中の男』の

章では思わずうんうん・・・と頷いておりましたわ(笑)

 

月の砂漠をさばさばと(北村薫・新潮社文庫)

9歳のさきちゃんと作家のお母さんの心温まるハートフルストーリーに仕

上がっております。このお母さんとさきちゃんの距離感が凄く理想的に思

えました。優しさだけでなく不安も抱くさきちゃんに対して一生懸命答え

ようとするお母さんが素晴らしすぎです。何となしに自分の子供時代を

彿とさせる一幕もあったりして・・・。一番すきな話はダオベロマンが

するお話です。思わずくすっと笑ってしまいましたもの。おーなり由

さんの挿絵もとて優しく描かれており、どなたにもお勧めな一冊に仕

がっています。

 

朝霧(北村薫・創元クライムクラブ)

『落語の円紫師匠と私』シリーズの第4作目に当たる本作品は、1作目では

女子大生だった私も出版社に就職しました。いつも一緒だった正ちゃん江美

ちゃんが僅かしか出てこないのは寂しい限りですけど、円紫師匠の切れ味は

相変わらずで惚れれしちゃうのです。また主人公の『私』ですけど、大学

生の頃には感じられなかった大人(社会人)っぽさをひしひしと感じました

&こんなに博識で?あとリドル・ストーリーなところを読んでいる

と何だか『北村薫の謎なギャラリー』を読んでいるような気分になってし

ったのは円紫師匠=北村薫だからなのでしょうか?

 

搬上の敵(北村薫・講談社ノベルズ)

「真っ暗闇の中の灯火」とでも申しましょうか・・・この作品は作者自

身が『安らぎを求める人にはこの本は不向きです』言っています通り、

安らぎは求められないでしょう。特に心の優しい方にはハートが痛くな

る辛い作品だとは思います。ただこの心の痛みが分かち合えない方には

この作品ってどうとらえるのでしょうね?あと文章の構成が上手なので

しょう。最初はすらすらと、中盤からぐっと読ませてくれますよ。北村

ファンならずとも一読していただきたい作品ではあります。

 

六の宮の姫君(北村薫・銅元推理文庫)

「この前合った時と同じ感想になりましたね。」

「は?」

「ほら、おっしゃったでしょう。僕の師匠が3代目圓馬の高座に会わなかったら、
あなたも僕の『六尺棒』を聴いてはいないはずだって」

「・・・・・・本当。そうですね。私、同じ事をいってる」

「円紫師匠と私」シリーズの第4作目にあたる本書は、芥川龍之介の作品で

ある「六の宮の姫君」の謎に迫るという一風変わった作品でした。聞けばご

本人が卒論で取り扱ったテーマとのこと。思わず自分の取り扱ったテーマの

掘り下げ方の浅さを痛感させられ赤面してしまいました(笑)。このシリー

ズ全体に流れる心地よい雰囲気を保ちつつ、「私」が自然に成長していく姿

を一緒に体感出来る、また卒論らしく昭和初期の文学の勉強にもなるという

(笑)良作だったと思います。ただ本作品と心を通わす事が出来ないと少々

取っつきにくいかもしれません。

 

【リセット(北村薫・新潮社)】

「・・・・・この前は見なかったから、これが初めてだ」
「一緒に見ようととっておいたの?」
「そういうことさ。この目が見る、最初で最後の獅子座流星群だ。」
「ただ一度、二度とない?」
「ああ」
「・・・・・・また見ましょう。あと三十三年、生きて。」

「人の想いって素敵だな」と素直に思わせる素晴らしい作品でした。内容的には横文字3部

作の中で一番オーソドックスだったかもしれませんが、それゆえにストレートに 作者の気

持ち(想い)が伝わってきたような気がします。この作品についてはこれ以上語ることが出

来ません。あとは各々で読んで感じてください。

 

【リターン(北村薫・新潮文庫)】

私は瞳を動かすと、あなたは、顔を目の前に持ってきてくれた。

わたしは、言った。霧雨のように、そっと

「・・・・・・・・ただいま」

存在しているのは自分しかいない、更にそこで流れる時間は丸一日過ぎると元に戻ってしま

うという奇妙な世界に入り込んでしまう。どんなことをしても一日で元通りに戻ってしまう

日々を過ごし気力の限界が近づいていたとき、ふいに家の電話が鳴る。受話器を取ると相手

は見ず知らずの男性だった・・・という感じで始まる北村薫さんの横文字タイトルシリーズ

(今勝手に命名しました)第二弾です。最初の文章の書かれ方に「いつもと全然違う、読み

にくい・・」と思うでしょうが、途中まで読めば「なるほど!」と、また最後まで読むと「

そうだったのか・・」と思わせます。2度3度と読み返せる作品ですのでぜひお楽しみ下さ

い。次回作の「リセット」も楽しみです。

 

【秋の花(北村薫・創元推理文庫)】

『救うことは出来る。そして、救わなければならない、と思います。

親だから、余計、そう思います・・・』

日常の中のさり気ない一コマを描いていて、アットホームな作風がお気に入りでした『私と

円紫さん』シリーズの第三弾です。今回は私の母校で起こった事故について解明してゆきま

す。今までの作品と大きく違う点は殺人が絡むことで、ぐっと重たい雰囲気が漂うようにな

りました(今までの雰囲気も損なわれていないのでご安心下さい)。また以前の自分と関わ

り合った友人たちの顔を思い浮かべてしまうシーンが度々ありました。

 

【謎物語(北村薫・中公文庫】

北村薫さんのルーツを探ることの出来るエッセイ集です。北村さんは本格派指向では無いと

思っていただけに本作品を読んで驚いてしまいました。特に第八回『魅せる踊り』の章にフ

ンフンと頷きながら読ませてもらいました。

 

【空飛ぶ馬(北村薫・創元推理文庫)】

北村薫さんのデビュー作。まだ覆面作家だった頃の作品ってことですね。主人公である19歳

の女子大生と落語家の桜亭円紫さんの人情味溢れる日常ミステリー作品です。日常に潜む些細

な出来事。ほんの少し着目点を変えるだけで非日常的な出来事が生れるんだなーといつもなが

ら感心してしまう出来ばえです。

 

【Skip▼▼(北村薫・新潮社)】

北村さんの作品に登場する人物は皆一本筋が通っていると思う。この作品の主人公も然り。タ

イムトラベルしてしまう主人公を悲劇の主人公として描くのではなく、(何とか折り合いを着

けながら)その時代に前向きに適応していく姿を見ていると、荒んだ心に清涼感を醸し出しま

す。淡々と読めますけど面白かったです。